30数年来のピアノ・エレクトーンの演奏指導経験より体得した視点による、ジュニア~シニアまで幅広く適用できるピアノレッスンについての豆知識や方法論をピアノ科コーチ竹内-Yuuko-裕子がご紹介致します。
鍵盤を友達にして慣れ親しもう
2024年 7/1(月)
幼稚園や保育園で「鍵盤ハーモニカ=ピアニカ」を使って音を出したことがあるお子さんが多いと思います。
特に筋力が大人と比べると非常に弱い幼少のお子様は、まずは鍵盤ハーモニカで指使いから覚えていくと良いと私は考えます。
遊びの延長線上として楽器を演奏する楽しさから興味を拡げていくと良いと思います。
指もまだ短く小さなもみじのような手で、大人と同じサイズの鍵盤を打鍵する行為で負荷が掛かり、腱鞘炎等けがを招くことも考えられます。
筋トレ同様、徐々に負荷を掛け、腕や指のパワーアップを図ると良いでしょう。
市販のポータブル鍵盤(カシオトーンやポータトーン等)で鍵盤に慣れ親しむとピアノ演奏に移行しやすいです。
親御様は日々の音遊びから興味を拡げて、音楽の楽しさを伝え、練習する意欲を養って差し上げて下さい。
ご家族様のご協力なしには、お子様のピアノの上達は望めません。
ピアノが人に授ける創造の翼
2024年 7/7(日)
幼少期より、音楽に触れ楽器を演奏し始めることにより、コミュニケーション能力や学力をアップする事が可能であるとの学者の研究結果があります。
左右の手を連携させて演奏するピアノやその他楽器を扱う音楽教育は、前頭前野領域を活性化し、記憶力及び集中力を向上させ、子供の知育に相応しい教育です。
1928年にRichard E Scammonが研究発表した成長曲線によると、青年時に100%完成したと仮定すると4歳時に80%、6歳時には90%の成長度であるとの事。
幼児期の音楽教育が如何に脳の成長に寄与するか人類学的に証明されています。※Science&Education出典
絶対音感そして相対音感の発達にも役立ち、計算能力や言語能力の発達にも貢献します。
東大生の約六割強が幼少期よりピアノレッスン等音楽教育を受けていた事実が如実にそれを証明しています。
※育児・教育ジャーナリストおおたとしまさ氏著
習い事狂騒曲: 正解のない時代の「習活」の心得 (ポプラ新書)参照
高齢者の方にも楽器演奏はとても役立ち、指先の細やかなコントロールと脳の協調性により、認知症の発症を遅らせたり、予防する事も可能です。
音楽を通じ楽しむ事で、社会的かつ健康的で気持ちの豊かな生活を送る事が出来ます。
お薬替りに役立つ趣味にもなります。
あなたも勇気を出して、創造する自由な翼を手に入れてみませんか?
マイピアノはアコースティックかデジタルか?
2024年 7/9(水)
普段使いの練習に使うピアノの選定に皆様、悩まれる事と思います。
グランドピアノはかなりの重量があり、戸建て住宅でも、床の耐久性が求められます。
まず、階下への重量の負荷と騒音の伝播の関係上、二階には設置しない方が得策でしょう。
アップライトピアノでも、激しい曲調のものはかなりのDb(騒音数値)になります。
防音室に設置しないとご近所トラブルにもなりかねません。
特に床下に生活用水の配管が敷設されていた場合、50~100m位離れた町内の方からクレームが発生したりする危険性も想定されます。
音が配管を伝わり遠くのお住いまで伝わってしまうのです。
厳密な仕様の違い(アップライトはピアノ線が垂直に配置され、グランドピアノは水平に配置されている)は、弾いた時の手応えの違いを生みます。
しかも、グランドピアノのボディのサイズの違いは独特の深みのある味わい深い音色を産み出します。
なので本格的にピアノを弾きたい、弾かせたいのであれば、無論グランドピアノに軍配が上がります。
しかしそれ相応の投資も必要となります。
上級機種になるとかなりの金額になります。
国産機種の中古でもコンディションの良い物は、100万円~(運搬設置も考慮)になります。
ピアノをリビングやダイニングに設置して弾く方が多いと思いますが、部屋の湿気や台所の油分の付着等で、ハンマーアクションが損なわれたり、ハンマーフェルトの変形やベタ付きが生じたりします。
勿論最低年1~2回の定期的チューニングが必要であったり、ランニングコストについても覚悟が必要です。
ご自宅で騒音を気にする事無く、早朝深夜でも練習可能なピアノはデジタルピアノがお勧めです。
外部に音漏れせずヘッドホンで練習が可能です。
デジタルピアノの進化は著しく、ここ数年内に発売された物には音大生の自宅練習用として使えるピアノもあり、世界的名機の音を本家開発陣との技術提携によりシミュレーションした機種もあります。
タッチもアコースティックピアノ同様の精度の高いシリーズも製造されています。
技術革新により、充分使用に耐える物が増えました。
定期的なメンテナンスもほぼ必要なく、電気代だけを考慮すれば良いでしょう。
AIの進化に比例して、更に音楽が身近でリーズナブルに楽しめるアートになってまいりました。
住宅事情や予算、諸々の諸条件を考慮して、生涯付き合える楽器を選ぶと良いでしょう。
歌うという事、弾くという事
2024年 7/11(木)
ピアノに限らず、楽器を弾く時には、必ずメロディを口ずさみ「歌う」事を同時に積極的に取り入れてみましょう。
メロディを歌とシンクロさせる事で、自然とどこのポジションを弾くとイメージ通りの音が奏でられるかが身に着いてまいります。
相対音感、絶対音感問わず、スコアの呪縛から解き放たれ、自由な表現に結びついてまいります。
時間を惜しまず、日々丁寧に繰り返す事を取り入れてみて下さい。
一生ものの素晴らしい能力が発露する事でしょう。
時間が掛かっても丁寧に繰り返す事が大切です。
「好きこそものの上手なれ」です。
黒い(白い)犬とワルツを・シニアのピアノの勧め
2024年 8/30(金)
テリー・ケイの著書「白い犬とワルツを」の老人と犬の心温まる交流を描いた小説のタイトルを拝借しました。
黒い犬とは我が家の愛犬の色がそうなのでひねりをくわえてみました。
タイトルが音楽的だったもので、つい引用しました。
素敵なタイトルだと思います。
本の内容について記してしまうと、ネタバレして面白くなくなってしまうので、割愛しますが、「充実した人生を楽しむため」のコツを提案したいと思います。
特にペットの飼育同様に、楽器を演奏する、ピアノを弾くことは「精神的健康の向上」即ち「癒し」を得る事が出来ます。
「ストレスの軽減や感情の調整に与える影響」についてのエビデンスは「Thaut, M. H., & Gardiner, J. C. (2014). The influence of music on emotions and stress. Psychomusicology: Music, Mind, and Brain」にて発表されております。
ストレスや感情の調整に役立つとの事です。
「身体的健康の維持と促進」にも大いに役立ちます。
「Watanabe, K., & Nagai, M. (2018). The effect of piano playing on finger and hand muscle strength in older adults. Geriatrics & Gerontology International, 18(12), 1702-1707.」に記載されておりますが、「健康な高齢者の指の強さと手の器用さに対する筋力トレーニングの効果」がうたわれています。
歳を重ねれば重ねる程、筋力の強化と姿勢の矯正が必要になってきます。
心も身体も若々しく、溌溂と生活する一助としてピアノを弾く事はお勧めです。
両手と全ての指をフル活用する楽器演奏が、ひいては昨今社会問題化している「認知症」の予防にも役立ちます。
指の運動が「脳活」に大いに寄与します。
ピアノレッスンが高齢者の実行機能や作業記憶にプラスの影響を与えることが学術的に報告されています。
特に反復練習と機能訓練により、肉体の衰えを防ぎ、精神的安定と記憶力の強化に役立つのです。
閉じこもりがちな高齢者がピアノ演奏を通じ、主観的な幸福感と社会的なつながりを持てることも大きなメリットです。
新たな目標設定と自己実現が活気あるある生活を創造します。
Creech, A., Hallam, S., Varvarigou, M., & McQueen, H. (2013). Active music making: A route to enhanced subjective well-being among older people. Perspectives in Public Health, 133(1), 36-43.
あなたも愛らしい「子犬のワルツ」を奏でてみませんか?
そのお手伝いを任せて頂けたらと思います。
ピアノの色はなぜ黒い?
2024年 9/10(火)
テレビのクイズ番組でも触れているのを観た事がある方もいらっしゃるでしょう。
普段見掛けるピアノはほとんどが「黒」です。
中にはワインカラーや鮮やかな色目のものもありますが…….。
因みにジョン・レノンの「イマジン」のPVのピアノは白でしたね。
歴史的・実用的な背景から、次のような理由があります。
・伝統の美学
黒は高級感を感じさせる色とされており、特にクラシック音楽の世界ではピアノが高貴な楽器として扱われてきました。
18世紀から19世紀にかけて、ピアノのデザインが発展するにつれて、黒い塗装が好まれるようになりました。
黒いピアノは他の楽器や家具と調和しやすく、厳粛で洗練された印象を与えます。
・耐久性
ピアノの表面を黒い塗装で覆うことは、木材を保護するためにも役立ちます。
ピアノは長期間使用されるため、耐久性の高い塗装が求められます。
黒い塗料やラッカーは、傷や汚れが目立ちにくく、メンテナンスがしやすいという実用的な理由もあります。
因みに「漆仕上げ」の技術はわが国発祥との意見もあり、湿度が高い日本での使用にはメリットがあります。
・コスト効率
黒いピアノは大量生産されているため、他の色よりも製造コストが安くなることがあります。
特にグランドピアノやアップライトピアノの標準モデルでは、黒が最も一般的です。
木目が表面に出ず、塗装により隠すことができます。
個体差による、木地の柄の良否を問われません。
ピアノについての色々なアイディアやトリビアを今後もご案内致しますね。
ますますピアノが好きになることでしょう。
皆さんの音楽人生にお役立て下さい。
ピアノって面白い
2024年 10/27(日)
①ピアノの鍵盤は88鍵で始まったわけではない。
現在のピアノは88鍵の鍵盤が一般的ですが、19世紀初頭のピアノはもっと少ない鍵盤数でした。
ピアノの音域は改良を重ねるごとに広がり、スタインウェイ社が1860年代に88鍵の設計を採用し、これが世界標準となりました。
②ピアノは弦楽器でもあり、打楽器でもある。
鍵盤楽器として分類されるピアノは、ピアノ線をハンマーで打鍵して音を鳴らすことから、
弦楽器でもあり打楽器でもある両者の要素を兼ね備えた珍しい楽器といえます。
➂ピアノは脳にとっての「完璧なエクササイズ」
ピアノを弾くことで、両手を独立して動かすだけでなく、楽譜の読み取りやリズム感も必要になるため、脳の広範囲が活発に同時的に働きます。
研究では、ピアノ演奏が記憶力や集中力を高め、認知機能の向上に寄与することが裏付けられています。
勿論幼児や青少年にとっては学習能力の向上が期待されます。
④ピアノは実は非常に高価な発明品だった。
イタリア・フィレンツェのメディチ家に仕えたバルトロメオ・クリストフォリが、1720年に初めてピアノを発明しましたが、当時は非常に高価で、王侯貴族など限られた人々しか所有できないものでした。
今日では家庭にも普及していますが、歴史的にはとても贅沢な楽器です。
➄ピアノ演奏の最長記録
世界で最も長時間ピアノを弾いた記録は、最長で127時間です。
これは驚異的な耐久力を要する挑戦で、身体と精神の両面で大変な試練です。
このような記録からも、ピアノ演奏がもたらす忍耐力や集中力がいかに重要であるかが分かります。
鬼才の系譜
2024年 11/14(木)
Erik Satie(エリック・サティ) 1866 5/17~1925 7/1
ヴェクサシオン(1895)
「嫌がらせ、癪の種、自尊心を傷つけるもの」等の意味をもつ。
52拍からなる1分位の曲を840回繰り返す曲である。
メトロノーム記号(♩=〇〇〇)の表記がなされていないため、フルコーラス18時間~25時間までの巾がある。
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=U5R8xe2cCbA
ピアニスト Jeroen van Veen
John Milton Cage Jr.(ジョン・ミルトン・ケージ・ジュニア) 1912 9/5~1992 8/12
世界最長の演奏時間を持つ作品「Organ²/ASLSP(As Slow As Possible= 可能な限り遅く)」を作曲した。
アバンギャルド、前衛音楽作曲家として高名ですが、音価や休符の表現、音楽の要件として重要な横軸(テンポ=サイズ)の可能性に一石を投じた問題作でしょう。
よくテレビの音楽番組で、芸能人がピアノ演奏の難易度(超絶技巧)を競うものが存在しますが、弾く曲のイントロのカウントのテンポが曲の終了時に、走ってしまった結果から、かなりアップビートになっています。
テンポキープに対する配慮が欠如している結果だと思います。
正確無比に弾くことは重要な要件ではありますが、気の焦りからかパッセージ(BPS)がかなり速くなっています。
一つの音にこだわってこその音楽だと私は考えます。
作曲は人生の限られた時間軸とインスピレーションを切り取り、譜面の中へ落とし込み、永続性のある「作品」として遺す行為です。
演奏者に無限の演奏時間を与えたこの作品は、ドイツのハルバーシュタットの聖ブキャルディ廃教会で2001年 9/5(ジョンの89歳の誕生日)から演奏を始め(終了予定は2040年 9/5)、639年の遠大な時間を掛けてオルガンで演奏される予定になっています。
※Wikipedia
ピアノと異なり、オルガンという楽器の特性(持続系楽器)から、一つの音価の巾が表現拡大可能だからなのでしょう。
ジョン・ケージの執念を感じさせるエピソードです。
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